2015年に投資した小児クリニックは2021年にコロナによるホーチミン市ロックダウン(封鎖)のなか倒産しました。2023年10月、新たにメンバー4人でヘルスケアアジア株式会社を設立しASEANでの活動を開始したいま、当時の記事から私たちの過去の蹉跌を記録に残し、次に活かします。
『ホーチミン1区の小児クリニックに旧ヘルスケアアジア株式会社から調印式にて36%の出資を行い、運営に参加しました。オーナーはベトチャンドクチャンの執刀医の一人であるディン先生です。先生はもともとホーチミン第一小児病院の副院長ですが、病院近隣の1区にクリニックを開設し診療活動を行っています。
小児クリニックは1区にありながらホーチミンシティすべてのエリアから富裕層の子供たちが治療に来院してきます。小児病院の外来診療単価が100円~600円であるのに対し、当クリニックは2,000円の単価ではありますが、ディン先生が有名であり、彼が診療していない時間帯でも多くの患者さんが退院しています。
当クリニックにはホーチミンにありがちですが、駐輪場だけで駐車場がなく、狭い入口の前に高級車が止まり、診療が終わるころに迎えにくるといった具合で患者や家族の出入りがあります。日本でもこのように混雑した小児クリニックは少数だと思いますが、多いときには1日に200人を超える患者さんが来院します。
まだ、病診連携がうまく体系化されていないベトナムでは、例え古いX線と超音波しかない当クリニックであっても、よい医師に診てもらいたいという家族の思いがそうさせているのだと思います。
現状はクリニックがどのように運営されているのかを観察し、運営のナレッジを得ることが目的ですが、クリニックの会計が脆弱であるところ、実態を理解するまでには時間がかかりそうです。ちなみにレセコンはしっかりしたものがありますし、電子カルテもありますが、勉強できていないこともあり民間保険も含め保険制度が複雑なことや、報酬体系について掌握できていないこともあるので、早急にこれらの掌握を行いたいとは考えています。
なお、クリニック職員のホスピタリティは日本と似通ったところが多く、ベトナム人は日本の医療のきめの細かさを習得するのにそれほど時間はかからないという印象もあります。たまたま当クリニックのカン事務長は、過去に日本のメーカーに勤務していた実績もあり日本人のメンタリティをよく分かっている感じがあり、良かったと思います。当クリニックでのナレッジ取得後に問題点や課題出しを行い、日式の医療を展開するためのシステム作りを行うことがミッションとなっています。
ただ、私たちが毎日勤務することができない現状において、クリニックの運営を的確に把握し実際にオペレーションレベルでマネジメントを行うことは難しく、日本人ではなくとも信頼できるベトナム人のマネージャーが必要という思いはあります。引き続きホーチミンシティ1区の小児クリニックの運営状況を理解し、次のステップに進めるよう活動していきたいと考えています』
上記の思いや取組みはあったものの、
- クリニックに投資家側のスタッフを置かなかったこと
- 管理会計を精緻に行っていなかったこと
- 日々の管理を怠ったこと
- システムの構築が遅れたこと
- 経営陣とのコミュニケーションがうまくできなかったこと
- 財務をグリップできなかったこと
がコロナを乗り越えられなかった要因だと考えています。これからの活動の糧にして再スタートすることを決意しています。(文責:石井友二)
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