ベトナムの人口と所得は、近年ともに拡大を続けていますが、その伸び率にはやや鈍化の傾向が見られます。

以下では、過去5年間(2019年~2023年)の推移を概観します。2019年の国勢調査によるベトナムの人口は約9,620万9,000人でした。10年ごとに実施される国勢調査では、2019年4月1日時点で96,208,984人と報告されています 。2020年以降は毎年およそ1.1%前後の緩やかな成長率で人口が増加し、2020年には約97,300,000人、2021年には約98,300,000人に達したと推計されます。 2022年には約99,100,000人となり、年間成長率は0.9%前後にやや低下しました 。そして2023年には、世界銀行の統計で100,352,192人と約1億人の大台を突破しました。人口成長率は2019年に約1.14%であったのに対し、2023年には約0.7%まで低下するなど、少子化や都市化の進展に伴う出生率の低下が示唆されます 。この間、高齢化も徐々に進行しており、総人口に占める65歳以上の割合は増加傾向にあります。これにより労働力人口の減少や社会保障負担の増大が懸念されています。

また、名目GDPに対する1人当たりGDP(USドル)は、2019年に約3,439ドルでした  2020年は新型コロナ禍で世界経済が停滞する中でも約3,549ドルと前年比約3.1%の成長を維持しました。2021年には約3,757ドル(前年比約5.9%増)、2022年には約4,102ドル(同約9.2%増)と、経済回復とともに成長率が加速しました 。そして2023年には約4,324ドル(前年比約5.4%増)にまで拡大し、中所得国から高所得国への移行を目指す足がかりを築いています。実質GDP成長率は2020年に2.9%、2021年に2.6%とコロナ禍で減速したものの、2022年に8.0%、2023年に5.1%と高い伸びを示しました 。これが1人当たりGDPの上昇を後押しし、購買力の向上や中間所得層の拡大に寄与しています。

労働力人口の構造変化人口増加率の鈍化と高齢化の進行により、労働力人口(15~64歳)はほぼ横ばいないし微増にとどまりつつあります。そのため、今後は生産性向上や技能人材育成が一層重要になります。

思ったよりも早くベトナムの平均年齢増があるものの、教育レベルは向上し、外国からの投資も盛んななか、まだまだ生活水準の向上や経済発展は見込めると考えています。一方で、東京のような街並みのハノイやホーチミンといった都市部と農村部、地域間での1人当たり所得格差が依然存在し、都市化の進展(都市人口比率の上昇)とともに経済・社会インフラの整備が求められています。ベトナム政府は2045年までに高所得国入りを目指しているため、年間6%程度の1人当たり実質成長を維持する必要があります 。ホーチミンでは多くの若者による起業が盛んで、ある意味優秀な人材がさまざまな新規事業に取り組んでいますが、今後は国をあげた環境保全やデジタル化、グリーン成長などを組み合わせた多角的な成長戦略が経済発展の鍵になると考えています。

以上のように、過去5年間のベトナムは総人口が約9600万人から1億人規模へと着実に増加し、1人当たりGDPも約3400ドルから4300ドルへと拡大する成長を遂げましたが、同時に人口増加速度の鈍化や所得格差、高齢化といった課題にも直面しており、持続可能な経済・社会発展に向けた政策対応がますます重要となっていると考えています。

なお、日本でもそうであったように一定の経済発展のあるところには健康志向の国民が増加する傾向があります。ベトナムでも健康に留意するミドルアッパークラスのビジネスパーソンが増加し、ヘルスケアジアの顧客増となる可能性が高くあります。彼らの健康管理に資することで、ベトナムの経済発展に貢献することがヘルスケアアジアの大きな目標の一つでもあるところ、経済発展による所得増の視点からベトナムマーケットの動向をみつつ日本とベトナム間での着実な事業展開を行っていきたいと決意しています。

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